辛口?書評:今田・東野の分析のほうが読みたい

やりすぎのツッコミ芸人企画を見ながら書いてます。この企画大好き〜。
デンジャラス雛壇芸人が、ほとんどあらびき団

【本の感想】『松本人志はなぜ人に媚びず自信満々に成功し続けるのか』

先日マイミクさんがトークライブに行ってきた、遠田氏の出した新刊のお知らせメールが、Amazonから来ました。まぁタイトルが、上記の『松本人志はなぜ〜』なので、そりゃぁAmazonでの私の買い物履歴から、自動マーケティング機能に引っかかるわなw

一応、会社帰りに紀伊国屋で立ち読みしてきました。以下、ごくごく淡々と「こんな本でした」と書いているつもりだけど、褒めては無いから辛口に見えるかも(買って無いし・苦笑)。

松本人志入門書?

それなりの松本ファンなら、改めて買う必要は無い内容でした。9割以上は、『遺書』をはじめとした既存の出版物の内容をかいつまんでいるだけの、今さらながらの松ちゃん入門書レベル。

松ちゃんのことを今から知りたい人が読むなら、ストレートに、『遺書』や『愛』や『哲学』を古本屋で買って読んだほうが、面白いし内容もあると思う。

ジャンルとしてはビジネス書(自己啓発書?)だと著者も言っていて、内容紹介も『松本人志は、なぜ人に媚びず自信満々に生きられるのか? サラリーマンが憧れる「人に媚びずに、成功し続ける」という彼の生き方から、迷える人々に役立つヒントを探る。』となっているのに、松本人志の人生をテキパキ解説するだけで、自己啓発っぽさは、ほとんど無かったです。

「業界人で無いから書ける内容にしたい」とか書いていたけれど、業界人で無いため、既存の他人の(業界人の)出版物を切り抜いてなぞっていっただけという印象が強い。

こういう内容ではなく、例えば、自分のお笑いブログによって出来たネットワークを使って、「売れる前のダウンタウンの漫才を、なんば花月で見たことのある人から直接聞いた話」といった、お笑いファンの草の根情報があるのかと期待してたんだけれど・・・。

●今田東野を分析した本が読みたい

終盤に、
「若手芸人を上手く優しくイジって美味しくしてあげられる今田・東野が重宝される今の時代、最終的には松本が笑いを持っていくという強固な型が出来上がっているダウンタウン松本人志は、どういう方向性に行くのだろうか。不安と期待の目で見たい」
といった趣旨ことをちょこっと書いてましたが、むしろ、このあたりのことをメインに据えたほうが良かったのでは?

雑誌などで今田やWコージーにスポットが当てられる機会は増えたけれど、二人の後輩芸人の弄り方を詳細にパターン分けして分析したり、大御所との絡み方、愛嬌の出し方などを、じっくり解体・分析した書籍は、まだ出ていないと思います。

視聴者が忘れかけている、「ダウンタウンの側で棒立ちだった頃」から振り返って、彼らがいつ一皮剥けたのかとか、名古屋の局も含めたレギュラー番組での成長の過程を読みたいなー。

あと、浜ちゃんとの「ごぶごぶ」についても触れている、東野のインタビューとか(絶対買う!笑)。

東野は、ごぶごぶで「最終的には、大阪に戻ったりして自分の座を作って座長をやりたい」と言っていたけれど、今のルミネでの新喜劇には、どういう姿勢で取り組んでいるんだろう。
東野班の新喜劇を見たけれど、劇中では演者にもかかわらず、劇から一歩引いたような立ち位置で、周りの芸人が受けたり滑ったりするのをニヤニヤ見ている感じだった。

テレビの東野は面白いけれど、新喜劇の座長としてなら、ほんこんさんのほうが、私はずっと面白いと思うし、好きだ。
ほんこんさんの新喜劇を見て、「涙を流すほど笑った!ルミネで見た新喜劇で一番面白かった!」というブログもたくさん見てきた。

東野には彼なりの芸風やスタンスがあるだろうけど、どんな劇団を引っ張って、どんな笑いをやりたいのか、とてもインタビューしてみたい。そういう意味では、今田よりも東野のほうが、考えていることがつかめない感じがして興味があります。


【他のオススメ】『松本人志ショー』

業界人でなく、松本人志論を書くのなら、『松本人志ショー』(阿部嘉昭/1999年)くらいの本を書いて欲しいな。これ、字がビッシリで、本好き&ダウンタウン好きでないとなかなか手が出ないかもしれませんが、情熱的な文体も多くて、結構好き。

お値段もサイズも遠田氏の本と同じ程度なので、買うならこちらの労作をお薦めしますw

そのなかから、浜ちゃんのツッコミを描写しているところを抜粋;

『〜ここからは(漫才の内容を)起こさないが、「最高の浜田」があらわれる。すなわち「まるでチンピラのように」言葉を荒げ、語尾にメチャメチャ下品な粘りと回転が生じ、怒髪天を衝く勢いでまったく自我をなくしてしまう、しかしそれゆえに「可愛い」童顔の浜田が。』

『松本の奇想だけが彼らの才能の証なのではなく、浜田のツッコミとしての手法の多彩さ、喜怒の疾走感、表情変化の豊かさ、つまりは松本を前にしての「自己委託」の状態(のえ注:自己をさらけだしている状態)の強靭さ、それゆえの浜田の松本への愛の強さもまた、彼らの漫才にうつくしい彩りを与えているのだ。』

著者、かなり素敵に酔ってますw